30分の待ち時間
「俺も昨日、別れるとき、本当はスズに“また明日”って言いたかった。
だけど俺らはお互い名前と学年しか知らないで、住んでいる場所も高校名やメアドさえも言わないで別れを迎えた。
言いたかった、“また明日”って。
明日だけじゃない。
明日も明後日も来週も再来週も1週間後も、スズに会いたかった。
だけどいつまた逢えるのかわからないから。
俺は言えなかった。
…言っても良いんだよな?今日から」
「うん…っ!
言ってよ太一、言って。
あたしの彼氏になって、“また明日”って言って」
「喜んで!
何回でも言ってやるよ、スズ!」
あたしは思い切り、太一に抱きついた。
周りの視線なんて気にしていられなかった。
「…何?
何か色々と話進んでない?」
「本当ですね海先輩…」
「てか守屋さんって、好きな人いたんだ?
しかも相手が太一かよ…」
「ん?
海先輩、太一くん?が相手じゃ嫌なんですか?」
「だってアイツ、オレの名前、何度言ってもうみって言うんだ。
オレの名前、うみって書いてカイって読むんだけど…」
「そういえばさっき、うみ先輩って呼ばれていましたもんね」
「何度言い直しても直らねぇんだもん」
「フフッ、太一くん?って面白いんですね」
「……ッ」
「海先輩?どうしたんですか?
もしかして熱でもあるんですか?
顔、真っ赤ですよ?」
「……な、何でもねぇよ」
「そうですか?」
「…葉月が可愛すぎるんだよ」
「ん?
海先輩、何か言いましたか?」
「なっ、何も言ってねぇよ!」
「…海先輩ってもしかしてツンデレさんですか?
いつもクールそうなのに、何だか真っ赤で。
デレちゃいましたか?」
「ばっ……!?
んなわけ…ねぇよって否定できねぇ…」
「海先輩ツンデレですか!?」
「……知らね。
だけど良く言われる」
「無自覚ツンデレっ!?」
あたしの親友とその彼氏が話している声も姿も
あたしの目にははいってきませんでした