30分の待ち時間
「東堂ホテルの最寄り駅で降りた時、時間を見て、家帰って時刻表見てみたんだ」
「時刻表?
太一の家そんなのあるの?」
「兄貴が旅行好きだから。
そうしたら、あの最寄り駅にあの時間に着くには、俺らが当初乗るはずだった、30分後に乗ったんじゃ駄目だったんだよ。
1時間後じゃないと、あの最寄り駅に着かなかったんだ」
「1時間も話していたんだ…あたしたち」
よく考えてみれば、みかんを食べたり海で話したり、と。
30分と言う時間じゃ収まらないか。
「でもあたし、30分でも1時間でも良かったかな」
「ん?そう?」
「うん。
だって恋をするのに、時間なんて関係ないもんね!
30分でも1時間でも、あたしは太一を好きになったよ?」
「……ん、ありがと。
まぁ確かに、その通りだよな。
俺も時間なんて関係ない。
スズ自身を好きになったんだからな」
「ふふっ、太一ったら直球!」
「お前の方こそ直球じゃねぇか!スズ!」
「……本当、今年はあついの」
おばあさんが「フォフォフォ」と笑いながら奥に引っ込んだ。
「そういえば今度、数学のテストで点数競わない!?」
「良いよ。
スズの目標は何点?」
「この間55点だったからなー。
60点かな」
「プッ、目標まで低っ」
「じゃあ太一の目標点はいくつよ」
「前回58点だったからー。
62点だな!」
「目標点数まで負けた!」
「スズは馬鹿だからな。バーカバーカ」
「このお気楽能天気め!」
「どっちがお気楽能天気だ!」
「ムキーッ!」
たったの30分
されど30分
恋をするのには
哀しみをぶちまけるのには
時間なんて関係ない
【END】