30分の待ち時間
ベンチには、帽子を被った人しかいない。
右も見渡してみるけど、人がいる気配などない。
「……は?
どこにいるの?」
「ベンチだって言っただろ?」
「へ?」
…もしかして。
もしかしなくても。
「帽子被っている人?」
話しかけてみると、勢いよく声の主は上体を起こした。
あまりにも行動が早く、驚いて後ずさりして、足元に置いてあった鞄に足をぶつけてしまった。
「正解っ!
ちっちゃいおっちゃんや、宇宙人じゃなくて悪かったな」
「ごっ、ごめんなさい…」
思わず謝ると、その人は笑った。
…声からして、多分男だろうな。
「謝ることねーよ。
気にするな!」