30分の待ち時間
「敬語敬語」
彼はクスクス笑いながら、あたしへ突っ込む。
「あっごめん」
「だーかーら、謝らないでって」
「ごめん。……あっ」
「アハハ、スズ面白いね」
よっ、呼び捨て!?
普通さん付けとかちゃん付けじゃない?
…フレンドリーなんだな、この人は。
「俺は太一(たいち)。
気軽に太一って呼び捨てにして良いよ。
ちなみに高校1年」
「あっ、あたしも同い年だ」
「そーなんだ!
じゃあ本格的に、敬語はなしで!」
「わかった!」
太一、面白いなぁ。
30分も何もない駅で待つって、普通は憂鬱になるよね。
あたしは憂鬱になっちゃったよ。
それなのに太一は、凄く明るい。
自然にあたしまで明るくなってしまったのは、
言うまでもない。