好きで、言えなくて。でも、好きで。
「そんな風習はない。……が、仲が良くないことは認める。だからといって、俺がお前を嫌いとは……」




「嫌いですよ。私に対する管理官の態度見てれば分かりますから。口数少ないし、業務連絡は命令だけだし、昔のこと持ち出すし。そりゃ族やってた私が悪いんだから、嫌われるのは仕方がないですけど。」



「そ、それは違う…!」



諦めたように吐き捨てる威叉奈に、棟郷は慌てて否定する。



「違うってなんなんですか?良いですよ、今更繕わなくても。さっきも言いましたけど、心配しなくてもナエちゃんの件は」



「それも違う!細脇のことは違うんだ。あれは、お前のことで…」


「私の?」



「いや、だから、その…」


「私の、なんなんですか?」



否定したのに棟郷は歯切れが悪くなり、言葉を濁す。



「お前の………俺は、細脇じゃなくて、お前のことが好きなんだ!」


「!!!」



威叉奈は、これでもかというぐらい目を見開く。



「か、からかわないで下さい…。いくらなんでも、悪ふざけが過ぎます。」



棟郷の言葉は威叉奈の心を抉り、やっと絞り出した声は震えていた。
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