好きで、言えなくて。でも、好きで。
出来損ないの過去
「やっぱり避けてますよね。」


「そうだな。」



あの日以来、威叉奈は棟郷をあからさまに避けていた。


ただし、元々捜査以外に接点を持とうとしなければ関わり合いの無い2人。

変化に気付いているのは、賭狗膳と早乙女だけだった。



「棟郷さん何とかして下さいよ。吹蜂さん、私達にまでかなり取り繕ってますし。」


「俺じゃ無理だ。」


「何でですか?吹蜂さんの親代わりでしょ。いつも言ってるじゃないですか!」



俺は威叉奈の親代わりだ。

何か揉め事や心配事があれば、そう賭狗膳は口にする。


威叉奈もそれを分かって、賭狗膳には素直だ。


しかし、今回は賭狗膳が問い掛けても、何も無い。と複雑に笑うだけだった。



「それはそうだが。昔、あいつが心を開くまでかなりかかったんだ。それに、今まで泣いたとこなんて、見たことねぇし。あいつの心はまだ……」


「……まだ?」



賭狗膳の脳裏には、出会った頃の威叉奈が浮かんでいた。
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