好きで、言えなくて。でも、好きで。
「お前、中学生だろ?学校はどうした?」



今は平日の昼過ぎ。


中学生がいていい時間ではない。



「………………。」


「って、おい!無視すんな!」



賭狗膳を一睨みした後、威叉奈は無言で背を向け歩き出した。



「ったく、何なんだあいつは。」



威勢よく向かってくる半グレとは違い、睨んできた目はともかく言葉と雰囲気は淡々としていた。


そんな威叉奈に、賭狗膳は気にはなったものの、管轄違いと疲れの為、追うこともせずその場を離れた。



「へ~、珍しいわね。普通なら殴りかかって来そうなものだけど。」


「ああ。なんか妙に冷静というか、冷めてるというか。変な奴だったよ。」



家に帰った賭狗膳は、苗込の手料理を食べながら、先程出会った変な奴――威叉奈のことを話していた。



「でも、その制服ならこの近くよね。親御さんは知っているのかしら。次見かけたら、話してみてよ。気になるし。」


「ああ。管轄外だから少年課に聞いてみる。俺もあの目、気になるしな。」


「お願い。」



賭狗膳の職業柄と子供がいないのが相まって、2人はそういうのが気になる質だった。
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