好きで、言えなくて。でも、好きで。
「駁兜?」


「グループの名前ですよ。」



数日後、担当事件が落ち着いたので賭狗膳は少年課へと赴いていた。


担当者が言うには、あの少女は駁兜(ハクト)という不良グループに所属しているようだ。



「賭狗膳さんが会ったその少女は、吹蜂威叉奈ですね。強い・非道・冷酷。反抗や意見はしないらしいですが、一匹狼の異質の存在で総長のお気に入り。それが原因で内部分裂してるみたいですが。」



「そんなに強いのか?」


「ええ。かなりのグループを壊滅や再起不能に追い込んでいます。」



威叉奈の強さは群を抜いているようだ。



「そんだけやってたら、何かしら対処してんだろ?」


「補導は何回もしてますよ。ただ、不良同士でお互い様な部分がありますからね。」



口頭での厳重注意が関の山らしい。



「親は何やってんだよ。娘が警察の世話になってんのに。」


「吹蜂威叉奈は親と死別しているようですよ。」


「死別?」



「ええ。身元引き受けに来た親戚の方が言っていましたから。」



担当者の目に浮かんだのは、迷惑そうに対応する親戚の姿だった。
< 20 / 92 >

この作品をシェア

pagetop