好きで、言えなくて。でも、好きで。
「このくそガキが!いい気になってんじゃねーよ!」


「うっぜーんだよ!」



威叉奈は絡まれていた。



毎日毎日。


入れ替わり立ち替わり。



敵対する族が。


年上の不良が。


いい年をしたチンピラが。


同じ族の一部が。



その度に威叉奈は、売られた喧嘩を買っていた。


時にはカツアゲや公共の物を壊したりと、自らも手を出して。



「よくやるよなぁ、あいつらもさ。威叉奈に勝てる訳ねぇのに。」


「……どっから湧いて出た。」



一喧嘩終えた威叉奈が鬱陶しそうに睨んだのは、威叉奈と同じく駁兜に属する不良、秩浦椒鰲(チチウラ ショウゴ)だった。



「湧いて出たは失礼じゃね?俺、ゴキブリか何かか?」


「それはゴキブリに失礼だろうが。」



「…………。俺の存在価値は何なんだ。」


「知るか。」



椒鰲は軽くショックを受けているようだが、かなりどうでもいい。とでも言いたげに、威叉奈は答えた。



威叉奈と椒鰲は同い年だが、学校が違う為、知り合ったのは駁兜に入ってから。


何かと喧嘩以外で絡んでくる椒鰲が、威叉奈は鬱陶しいことこの上なかった。
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