好きで、言えなくて。でも、好きで。
「あ!」


「は?」



椒鰲と別れて歩いていると、威叉奈は嬉しそうに近付いてくる賭狗膳に出会った。



「やっと会えた!かなり探したんだぞ。たむろ場所ぐらい作れ。」


「………………。」


「ちょ!待て、待て待て。」



踵を返す威叉奈に、行き道を塞ぐように賭狗膳は回り込む。



「パクりにでも来たのかよ。」



「課が違げーよ。」


「じゃマル暴が何の用だ。俺のこと嗅ぎ回ってんの、おっさんだろ?」



「んだよ、分かってんなら会いに来いよー。」



残念そうな言い種だが、顔は完全に拗ねていた。



「わざわざ、サツに会いに行くほど馬鹿じゃねぇ。」



「そうかよ。な、腹減ってねーか?嫁の料理、美味いんだ。」


「いらね。目障り、イラつく、視界から消えろ。」


「ひっでー言い様。」



暴言を吐き捨て、威叉奈は立ち去った。



「まずまず…か。」



最初に会った時より、会話が出来た。一歩前進したと賭狗膳は思う。



しかし、やはり半グレやそこいらの不良とは何かが違う。

賭狗膳は世間や大人に対しての反抗心が、威叉奈からは感じ取れないでいた。
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