好きで、言えなくて。でも、好きで。
「あいつ、どこ行ったんだ?」



いつものように威叉奈を探していた賭狗膳だったが、今日は何故か見付からない。



威叉奈が立ち寄りそうな所は全て回った。



必ずといっていいほど、そのどこかに威叉奈はいたのに。


今日は居ない。



賭狗膳が見付けやすいようにか、新しい場所には賭狗膳と会ってから威叉奈は赴いていたのに。


今日は居ない。



「どこだよ!!」



嫌な予感がする。



1年前なら、こんなことは思わなかったはずだ。


フラフラと、威叉奈はたむろ場所を持たなかったから。



けれど、今は威叉奈は自分を待っていてくれていると感じていた。


信じたかった。


信じていたかった。



一方的に話しているだけだけど。


会話が成立したことなんて数える程度だけど。




威叉奈は、自分の意思で賭狗膳と居ると。



「……居た。威叉奈っ!」



反対側の歩道に、見慣れた背中があった。



「探したぞ、いつもの場所にいないから。お前、どうし………」



振り向いた威叉奈の姿に、賭狗膳は言葉を失った。
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