好きで、言えなくて。でも、好きで。
「どうした、これ?誰にやられた?!」



賭狗膳が見た威叉奈は、今までに見たことがないぐらいボロボロだった。



制服は引き裂かれ、切り傷、打撲傷、煙草なのか火傷の痕……



完全にリンチの痕だ。



「…………べ、つに。」



口の端も切れていて、かなり喋りにくそうだ。



「俺の家に来い。とりあえず手当てだ。」



フラついてされるがままの威叉奈に、ジャケットを着せて家へと連れ帰った。



「ちょっと、どうしたの?!」


「おお。丁度良かった。とりあえず、手当てしてくれ。」


「分かったわ。」



賭狗膳が家に帰ると苗込がいた。


苗込の仕事はフリーライター。

この間まで色々取材して、今日はたまたま家で原稿を書いていたのだった。



「はい、これでいいわ。傷口が塞がるまではあまり動かないようにね。」



いきなり現れた威叉奈に驚いたものの、苗込は手際良く手当てをしていく。

消毒と包帯がされ、賭狗膳は少し安心する。


痛々しい見た目には変わりないが。
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