好きで、言えなくて。でも、好きで。
「な。どうしたよ、これ。誰にやられたんだ?敵対の族か?チンピラか?それとも……駁兜の連中か?」



駁兜、その名前を言った瞬間、威叉奈が少しだけ反応する。


賭狗膳はそれを見逃さなかった。



「内部抗争か……。かなり揉めてんだろ?なんで離れねぇ?」



心を開いてもらう為に、これまで威叉奈と話したのは世間話か自分の仕事のことぐらい。


賭狗膳は出会ってから初めて、威叉奈に疑問をぶつけた。



「総長に気に入られてるからか?けどよ、総長が内部抗争に気付いてない訳ねぇよな。お気に入りがこんな目にあっても知らん顔か?」



賭狗膳は、総長は族を統制し守るものだと思っていた。

それがたとえ、世間からつま弾きな集団だとしても、その辺は筋が通っているものだと。



「トクさん、それじゃ尋問と変わらないわよ。威叉奈ちゃんよね?今日はウチで夕御飯食べていきなさい。ねっ!」



ご馳走作るわよ~。と張り切っている苗込に、はしゃぎ過ぎだ。と賭狗膳は呆れる。



しかし、食事が終わるまで威叉奈は終始無言だった。


無視というよりは、ボーッとしている感じだったのだが。
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