好きで、言えなくて。でも、好きで。
「小学校の入学式から帰ってきたら、リビングで母親が首吊ってた。寝室に行ったら、父親が包丁で胸刺して血まみれだった。」



父親と母親は不仲だった。本人達すら原因が分からないほどに。


顔を合わせれば、無視か言い合い。発端はいつも些細なこと。


次の日、学校に来ない威叉奈を心配した担任が訪れるまで、威叉奈はリビングと寝室の間に呆然と座り込んでいた。



争った後は無く、リストラに合い無職だった父親が先に寝室で自殺を図り、寝室の扉は閉まっていた為、母親は気付かずにリビングで首を吊った。


互いが互いを知らずに自殺を図った。それが警察の見解だった。



「だから親戚のとこにいるだけ。」



世間体を気にした親戚が威叉奈を引き取った。

しかし、最低限の生活もみないほど放任されていた。


学校に行かなくても、夜出歩いても、警察に補導されても。



心配も注意も、怒りもしない。

ただ、引き取った。それだけだった。
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