好きで、言えなくて。でも、好きで。
「威叉奈はどうした?」


「そーいえばまだ来てませんね。」



賭狗膳が朝、威叉奈の姿を探すがいない。

携帯にかけても電源が切られていた。


課長に聞いても、仲間に聞いても、他の仕事を頼んでいないという。



「まさか…!」


「賭狗膳さん?」



思い当たったことに怒りに顔を歪ませ、賭狗膳はある部屋に向かう。



バンッ



「!!ノックぐらいしろ、賭狗膳。」



大きな音を立て、突然開いた扉に驚き声をあげた部屋の主。


それは事件も片付き、事務処理に追われている棟郷だった。



「威叉奈をどこへやった?!」



「は?何だいきなり。吹蜂がどうかしたのか?」


「惚けるな!姿が見えん。またお前が何かしたんだろ!」



「何かって………」



まさか昨日のあれか?いや、でも、あれぐらいでも、もしかしたら吹蜂にとっては……。


思い出す棟郷は、自然に目線がそれる。



「何か、したんだな?」



「っ…。待て、賭狗膳。話を…」



机越しに胸ぐらを掴まれる。


普段管理官の権力を盾に振る舞っている棟郷も、威叉奈のことになると賭狗膳に対して弱くなる。
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