好きで、言えなくて。でも、好きで。
「管理官!山の方面に向かったようですね。」



見せられた画面には、都心から離れた地域への道路を走る椒鰲のバイクがいた。



「もう少し絞り込めるな。映像はあるか?」


「はい、こちらに。」



手分けして威叉奈の乗った椒鰲のバイクを、監視カメラの映像で追っていた。



量は多いが、公共交通機関でなかったのが唯一の救いだ。


電車やバスなどを使われると、監視カメラでは追えなくなる。


その点、バイクなら必ず道路を通る。


ほぼ脇道にも逸れず、主要道路を走ってくれたおかげで、途切れることなく追えていた。



「これだな。棟郷、いたぞ。」


「ここは昔、別荘地として一世を風靡したところだな。」



夏には隠れた避暑地として人気だった。


しかし、景気が悪くなり今では噂も聞かないまでに落ち込んでいる。



「隠れ家にするには、もってこいの場所ですね。」


「監視カメラはここまでのようです。」


「そうか。助かった。賭狗膳、早乙女、行くぞ。」


「ああ。」


「はい!」


「お気を付けて。」



無事を祈る捜査員に見送られ、3人は別荘地へと向かった。
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