好きで、言えなくて。でも、好きで。
「なっ……!」


「か、管理官……」



ゴンッ、という音と共に現れたのは棟郷だった。



右腕で威叉奈を抱き締めるように引き寄せ、後ろから目の前の脅威から庇う。



「な、で…ここ、に…」


「しゃべるな。後ろにいろ。」



降り下ろされた枝を投げ捨て、威叉奈を自分の後ろへと追いやる。



「邪魔するな!サツごときがぁ!」



「っ……!」


「管理官っ!」



邪魔されたことでキレた椒鰲は、隠し持っていたバタフライナイフで棟郷を襲う。



「くっ………」



ギリギリ椒鰲の攻撃を避ける棟郷の顔の左側は、血に濡れていた。


威叉奈を見付けたのは、枝が降り下ろされる寸前。

考える余裕もなく突っ込んでしまって、避ける余裕がなかった。



「お…い、椒鰲っ!やめ、ろっ!殺りたいなら、お、れを殺りゃいい…だろうが!その人は関係ねぇ!」



椒鰲を止めようにも、棟郷を助けようにも、足に力が入らず引きずるように近付くことしか出来ない。


助けられた棟郷を助けようとするなど、元々無茶な話ではあるが。
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