好きで、言えなくて。でも、好きで。
「来るな、吹蜂…!」


「管理、官は関係ねぇ…!昔の、ケジメぐらい自分でっ……。あい、つの目的は……俺なはずだ。だから、管理官は…すっこんで、ろ……。………おい、こら、椒鰲っ!」



口ではそう言う棟郷もかなり追い詰められているのが見てとれて、威叉奈は注意を自分に向けさせようと叫ぶ。



「殺人、なんて外道…なんだろぉが!てめ…ぇ、自分で言ったこと、忘れてんじゃねぇ!」



「サツのせいだ……サツが威叉奈を、威叉奈を変えちまったんだ。だから、戻さなきゃいけねぇ。威叉奈は駁兜の総長で、俺は副総長になるはずだったんだよ!」



「……ちっ、聞いちゃ、いねぇ。おい、椒鰲っ!!」



威叉奈の言葉など届いていないかのように、椒鰲はブツブツと呟いている。



「威叉奈は………、威叉奈は………、俺のものだぁああぁぁ!!!」




「椒鰲、やめろぉぉーっ!!」



少しの間、動きが止まっていた椒鰲。


だが、突然爆発したような絶叫と共に棟郷に向かってナイフを振り翳す。



威叉奈は、叫ぶことしか出来なかった。
< 60 / 92 >

この作品をシェア

pagetop