好きで、言えなくて。でも、好きで。
「それで、結局何だったか分かったか?秩浦椒鰲の目的。吹蜂の名前、かなり叫んでいたが。」


「あー。まっ、簡単に言ゃあ、あいつは威叉奈に気があったらしいな。」


「…はぁ?好きなのに、あんな暴挙に出たってことか?」



椒鰲は、威叉奈のことが好きだった。



今となってはいつからかは分からないが、一匹狼のような振る舞いと族からの嫌がらせを意に介さない威叉奈に、憧れと共に惹かれていったらしい。



喧嘩の強さは、族の中で結構上位にいた椒鰲。


威叉奈は喧嘩の時の相棒に必ず自分を選んでくれていた、と椒鰲は言う。



しかし、当の威叉奈にとっては、喧嘩をする時に絡んできたのが椒鰲だっただけで、特に意味は無く、選んだという感覚も無かった。



「そのまんまだったら何も起きなかったんだ。14年前のあん時も。」


「リンチ………。あの辺で変化って言えば……、!」


「ああ、俺だ。」



威叉奈の行動に椒鰲は勘違いしていたものの、2人の間には問題はなかったはずだ。


威叉奈の前に、賭狗膳が現れるまでは。
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