好きで、言えなくて。でも、好きで。
「俺のせいで、威叉奈が変わっちまったと思ったらしい。まぁ、実際そうなんだが。」



威叉奈が族を離れようと思ったのも、警察官になろうと思ったのも、確かに賭狗膳と出会ったからだ。



しかしそれは、賭狗膳と苗込の温もりと愛情に触れ、本来の威叉奈の感情を取り戻したに過ぎない。



「リンチしたのも、俺のせいで変わっちまった威叉奈に目を覚ましてもらおうとした結果らしい。」



丁度、総長が威叉奈にその座を譲ると聞いた族の仲間が威叉奈をシメようと計画していた。


椒鰲はその計画に乗ったのだ。



だから、威叉奈は椒鰲が総長の座が欲しかったと勘違いしてしまった。



「総長に気に入られてるのに寄り付かない威叉奈を理解出来るのは、自分だけだと思い込んでたぜ。威叉奈が総長継いで、自分が副総長としてサポートして、族を大きくすることが、秩浦椒鰲の目標で夢だっただと。」



それが全て叶わなくなった。

賭狗膳のせいで。

警察のせいで。



「リンチの理由はともかく、何で今なんだ?そこから、10年以上も経ってるんだぞ?」



棟郷の言う通り、逆恨みするには、かなり時間が経っている。
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