好きで、言えなくて。でも、好きで。
スラスラと言っている威叉奈の話し方は、至って普通だった。

けれど、そこにある背中は泣いているように見えた。



「すい、……ぃ…っ……。」



どうしようもなくなって、棟郷はその背に触れようと体に力を入れたのだが。


鈍痛と共に、クラリと視界が揺れる。


その声に反応して、威叉奈が振り返った。



「管理か………」


「やっぱり、泣いてた。また賭狗膳に怒られるじゃないか。」


「何ですか、それ。」



怒られる、と言う割にはその声は優しかった。


悪態を付いても、抱き締められた体は温かかった。



「この間言われた。吹蜂を泣かせる奴は許さないと。」


「過保護……。心配させたくないからいつも通りにして言わなかったのに、意味ないじゃん…。」



いつも通り、では決してなかった。

とは、本気でそうしてたであろう威叉奈に、棟郷は言えるはずもなかった。



「心配ぐらいする。そして、それを分かるのが、あいつの凄いところだ。」



自分とは繋がりの深さが違うと、突き付けられたようなものだ。



そうされた訳ではないが、棟郷はそう感じずにはいられなかった。
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