好きで、言えなくて。でも、好きで。
「吹蜂、好きならなくていいと言ったがな………本音を言えばそんなことはない。だから…、だからな、嫌なら突き飛ばしても構わないから、振りほどいてくれないか?」



ベッドにいて、いつもとは逆の高さ。

肩に感じる冷たさから、威叉奈が会話をしながらも涙を流しているのは分かっていた。



しかし、抱き締めたことについては触れられていない。



「この状況では、そうでもされないと、期待してしまう。自分では、もう…諦めきれない。」



そう言う棟郷だが、実際にされるのが怖くて、抱き締める腕に力を込めてしまう。



「吹蜂……?………!」



無反応の威叉奈に不安になり、名を呼ぶ。


すると、遠慮がちに、けれど、強く、自分の服を威叉奈はギュッと掴んできて。



「と…ごう、さん……」


名を呼ぶ声も掴む手も震えていて。



「…す、きです…………すき、なんです…」



ずっと前から―――。



しゃくり上げ求めるように言われてしまえば、棟郷はもう気持ちを抑えることは出来なくて。


この声もこの温もりも、全て手放したくないと。

身体中が叫んでいて。




己の欲の深さに苦笑した。
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