好きで、言えなくて。でも、好きで。
「はぁ……。もういい。威叉奈が部屋に居なかったから、今更止めに行ったって遅いんだろ?」


「察しが良くて助かる。」



棟郷の覚悟が伝わったのか、賭狗膳は諦めた。



「それとな、お前に言っておきたいことがあったんだ。」


「ん?」



賭狗膳が目を向けると、いつになく真剣な表情の棟郷。



「吹蜂と話した、色々と。」



管理官室でした約束のことらしい。



退院するまでの間、威叉奈は時間を見付けては病室を訪れ、棟郷と話をした。


両親のこと、駁兜のこと、昔のこと、賭狗膳と苗込のこと、仕事のこと。



賭狗膳と苗込は、族にいた時のことはあまり聞かなかったし、威叉奈も話そうとはしなかった。



しかし、棟郷には隠し事…というより全てを知っていてもらいたいと威叉奈が言うものだから、棟郷も止めずに聞いた。



「過去に何があろうと、それでも、俺は吹蜂を好きなことに変わりはない。今、俺は吹蜂と付き合っている。吹蜂にはまだ言っていないが、ゆくゆくは、結婚したいと思っている。」
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