好きで、言えなくて。でも、好きで。
「まあだから、吹蜂には知らないふりをしてくれないか?吹蜂の気持ちが固まるまで。頼む。」



苦笑いをしつつ、賭狗膳に言う。



「やっぱりここにいた。つか、何でトクさんがここに?」



椒鰲のことを報告したくて、棟郷を探しに屋上へ来た威叉奈が目にしたのは、目的の人物と何故か一緒にいる賭狗膳だった。



「い、威叉奈…!」



動揺が治まっていない賭狗膳に、威叉奈は不思議な表情を浮かべる。



「吹蜂が殴り込みに言ったと、伝えたところだ。」


「なっ…!な、殴ってはないですよ!殴っては……」



殴っては、ということは、それ以外の何かをしたのだろうか。



と、平手打ち紛いでもつい手が出てしまったのを悟られまいとして、微妙な挙動不審さを醸し出している威叉奈に、賭狗膳と棟郷は思う。



「まっ、吹蜂がそれで納得出来たのなら、別に構わん。」


「だ、だから殴ってません…!」



目を細め愛おしそうな棟郷に、威叉奈は恥ずかしさを隠すように拗ねた感じで誤魔化した。



「そ、そんなことより、トクさん、刑事部長との話終わったんだよね。闇ルートの捜査、行きますよっ!」
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