モモとウメと君と
君 の ヒ ミ ツ .
「立花 百(りっか もも)です。丘ノ山中出身で、元バスケ部でした。よろしくお願いします」
桜舞う4月。
私はこれから、待ちに待った高校生活を送るんだ。
おしゃれして、自分磨きして、部活動に入って、友だちも沢山つくって、恋もして……。
楽しい高校生活を想像した。
部活は決めていた。
中学でもやっていたバスケ部に所属しようと。
しかし、私には、1つ悩みがある。
それは…………
身長が低いこと。
いわゆるチビってやつです、はい。
150cmもいかないこの身長で、よくぞバスケをやっていられたなと思うかもしれないけど、この身長のおかげで人一倍身軽に動けてドリブルには有利だった。
昔は部活でよくチビを馬鹿にされた。
だから見返すために、毎日遅くまで残ってひたすらドリブルの練習をしたのを、今でもはっきり覚えている。
辛かったなあ……。
しかも、チビだけど強くなりたくて、習い事に空手もやったぐらいだ。
そして牛乳は習慣。
魚料理も週に5食は食べる。
それくらい、チビなのがコンプレックス。
そんなことを考えながら席につくと、今度は私の隣の席の人が、前に出て自己紹介をはじめた。
「橘 弘也(たちばな ひろや)です。……よろしくお願いします」
わあ〜!
すごく背が高くて、綺麗な人だなあ。
私と30センチ以上差がありそうなその人は、すらりとしていて顔立ちもいい。
席に座っているときにはわからなかったが、こんなに背が高いなんて。
思わずじぃーっと見つめていると、ふと目があってしまった。
ギロッ……
「ひっ!」
な、ななななに?この人!?
すっごーく目つき悪いんですけど!!
そいつはそんな私を気にとめることなく、静かに席についてダルそうに頬杖をついた。
「ねえねえ、今の人ちょっとかっこよくなかった?」
「うんうん!私も思った!」
「でもさ、なんか目つき悪いし怖くない?」
「確かに〜」
そんな声が、周りから聞こえていた。
ヒソヒソ話しているつもりなのかもしれないけど、聞こえてますよ!
本人にも絶対!!
と心の中でつっこんで。
確かに、なんだか感じ悪い人だなあ……。
目があっただけで睨むなんて、ちょっと酷い気もする。
そんな人の隣で授業を受けるなるて、これからの学校生活が心配だよ……。
「はあ……」
新学期早々、小さなため息をついた。