モモとウメと君と
ウ メ の ヒ ミ ツ .
「ん?あなたは……誰?見かけない子ね」
長いまつげと大きな目が、私を見つめる。
「えっ、あ、私は……」
「この子は俺の隣の席の立花さん。まあいろいろあって……仲良くなったんだ」
ふーん、と上から下まで舐めるように私を見て、ふっと笑った。
ちょ、何よその目!
なんだか私を嘲笑してるみたいじゃない!
まあ確かにこの子には勝てないけどさ?
身長も可愛さも。
だけど、初対面にそれはないでしょ!!
「私は如月 愛目(きさらぎ うめ)。愛目って呼んでけっこうだから。 ……そーれーよーりー、弘也ぁ〜。私にまた花の名前とか教えてよぉ」
「あ、うん。今日はこれ植えたんだけどね、…………」
2人は楽しそうに(特に愛目ちゃんが)、ガーデンの奥のほうに向かって歩いていった。
…………なんか、モヤモヤする。
なんだろう、この気持ち。
私だけのヒミツだと思っていたことが、そうではなくなったから?
愛目ちゃんが綺麗で身長も高いから?
すごく、胸の奥が…………ちくちくするような、痛いような、そんな感じ。
いや、そもそも私だけのヒミツだなんておかしことはわかってる。
愛目ちゃんが可愛いから、羨ましいと思っている自分がいることもわかってる。
愛目ちゃんって橘くんの何なんだろう?
名前で呼び合ってるし、愛目ちゃんは橘くんにベタベタくっついてる。
しかもあんなに仲良くてさ……まさか、彼女……とか??
ちくっ……
また、胸が痛くなった。
どうしよう、私なにか病気なのかな。
今日はもう、帰ったほうが良さそうな気がする。
「橘くーん、私そろそろ帰るね〜」
「あ、うん!また明日ー!」
「明日ねー!」
挨拶して、さて帰ろうと向きを変えようした間際、一瞬愛目ちゃんと目が合った。
その目は、『邪魔しないで』と言っているように見え、寒気を感じた。