モモとウメと君と
モ モ の ツ ヨ サ .







────とうとう、月に1度の席替えが行われた。



私と橘くんは、右端と左端に綺麗に離ればなれになり、必要な会話さえも、無くなった。


鯉のぼりが新校舎の屋上で泳ぎ、街にも色とりどりの鯉が揺れている。




……橘くんと、話したい。

また、あの日のように、
モモの花の話を聞きたい。



自業自得、こうなってしまったのは自分の勝手な意識のせい。


ほんっとバカだよね、あきれるほど。




愛目ちゃんの圧力と、自分の諦めでここまで苦しむなんて……私らしくないかな。


もう吹っ切れたいと思い、ゴールデンウィークの某日、気分転換くらいの軽い気持ちで私は繁華街に行くことにした。


そこは治安が悪いからあまり行くなと言われていたが、少し覗くくらいならいいかなあと。


本当に軽い気持ちだった。




学校にバレたらヤバそうだから、お気に入りの帽子を深々と被り、いつもは着ないような紺のワンピースとカーディガンで歩いていた。



すれ違う人たちはみんな、つんとしたアルコールのような匂いの人や、髪がカラフルな人、腰パンや刺青をしている人など、いかにもガラの悪そうな人たちで溢れている。



色んなものを見て回り、ちょっとお腹を満たしたところで、少し歩き疲れた。


どっかで休憩しようかな。


静かな場所がいいから、人気の少ない路地に入った。



すると突然、路地の先のほうから低くてどす太い声が耳に突き刺さった。




「ねぇちゃんよぉ、ちょっとくらい俺と遊んでってもいーじゃねぇかァ?身体なんて、無くなるものじゃねーだろお?なあ!?」

「や……やめてください!!」



どうやら、女の子が2人の男の人にナンパされているらしい。


でもここじゃ日常茶飯事なもので、周りの人たちは誰も気に留めず通りすぎる。


私も別に気にすることなく通りすぎようとしたとき、女の子の顔を見て、目を疑った。














「う、愛目ちゃん……!?」


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