青い春の真ん中で
「沙由奈は?今日、緑井くんに会った?」


壁ドンがきれいに決まって男前なことになっている沙由奈だが・・・

実は沙由奈。今日からつけまつげなしのナチュラルメイクに挑戦中。

髪型も前で分けてた前髪を切って前髪を作ったのだ。



こうすると、不思議なぐらいに女の子。

いや、今までももちろん女の子だったんだけど。

ただ、本当にかわいいのだ。


今までの初対面でも、どぎつそうな性格がありありとわかる雰囲気から一転。
話しかけやすい印象になった。


「会った...っていうより会いに行った。って感じだけど」


真紗希と沙由奈は目を合わせて笑った。


「湘真くん、かわいいって言ってくれたんだよね?そっちの方がずっとかわいいって」

真紗希が沙由奈の代わりに教えてくれた。


赤くなる沙由奈の顔。

照れて伏せる瞳。


あの時は怪獣にも見えた沙由奈が今ではすごくかわいくて愛おしい女の子にしか見えない。



「マイナスからのスタートだけど。頑張りたいって思って。変わりたいって思ってる」


変わりたい...

胸がズキッとした。


私はどうだろう。


変わる努力どころか、変化する自分に動揺してばかり。


有輝と付き合ってる時も何も変わらなかった。いつも受け身だった。

そのままでいられる相手が自分にとって合う人だと思っていた。


でも、もしかしたら有輝が歩み寄っていてくれたのかもしれない。



今の私、勝手に変わろうとする自分を認めたくなくて、自分の気持ちに目を背けてばかり。

自分らしくいられないんじゃなくて、自分の知らない経験をすることに怯えているだけなんだ。


好きな人に振り向いてもらいたくて努力してる沙由奈の姿はちっとも恥ずかしくないのに。

私は自分がそんな風に頑張ることがどこかで...恥ずかしいと思っていたのだ。

< 107 / 163 >

この作品をシェア

pagetop