青い春の真ん中で
あんな思わせぶりな言葉を吐いた後でも、瀬戸くんはいつもと変わらず。

すごくいい笑顔で廊下で美織ちゃんと話す姿を見る度、心が痛くなるよ。

マネージャーだし、話しててもおかしくないんだけど。

なんだかおもしろくない。



そんな二人を横目にトイレから帰る途中、廊下の向こうの方に、有輝を久しぶりに見た。


遠すぎてよくわからなかったけど、目が合ってる気がした。


でも、今の私にとっては気にも留めないぐらいのことに変わっている。


あれほどに辛くて苦しい思いをしたのに、今じゃこんなにあっさりと受け流せることが驚き。


そんなことより、こんなに親密なこの二人の関係の方がよっぽど気になる。

気になるばかりで、この気持ちのやり場にも困り...

どうしたいのか、どうすればいいのか。

自分の気持ちを持て余し、モヤモヤする日々。

そんな複雑な思いを抱えたまま試験週間は終わって…


今、机の上で返ってきた答案用紙を握りしめて震えている。


こんなに私は不器用だったのかと、思い知らされた。

恋と試験の両立は難しい。



恋に説明書もなければマニュアルもない。

そう考えれば、学校の勉強は教科書も公式も答えもちゃんとあってすごく親切に思えてくる。



なのに、この点数...


「やってしまった...」


机の上で倒れこむ私に、


「どうした?数学ならいつでも教えてあげるよ?」


ってめっちゃ笑顔。


こんな点数取ったのはあんたのせいだよ。


心の中、ずっと嵐なんだけど、瀬戸くんの心の方は南国リゾートみたいだね。


「はは...」


力なく笑った。






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