青い春の真ん中で
「夏祭り!いいねいいね」


盛り上がる二人。


「私、夏休みにドイツに行くことになったんだ」


真紗希の言葉に固まる一同。



「ドイツ?」


魂が抜けかけた私も魂が戻ってきて、声を上げた。



「うん。私の叔父がドイツにいて、叔父の奥さんがピアニストだから。会いに行って、色々なことを学べたらって思って」


真紗希が一気に遠い人に思えてきた。


「ドイツ...」


世界地図を頭の中で広げて場所を探す。

そのくらいの知識しかない。



「いずれは、留学しようと思ってて。下見のためにも。ドイツ語も覚えなきゃだし」


「おお・・・」


もう言葉も出ない私たち。


私たちにとっては遠い存在だとしても、真紗希にとってピアノは身近で自然なものなのかもしれない。


「真紗希は私たちにとって誇りだよ。かっこいい」


沙由奈の言葉に私たちも頷いた。

< 113 / 163 >

この作品をシェア

pagetop