青い春の真ん中で
トイレから戻ると、もう授業が始まっていた。


「椎名、どうした?大丈夫か?」


先生の言葉に軽くうなずいて席に着いた。



「大丈夫か?」


小声で話しかけてきた瀬戸くんの声。

聞こえないふりをした。



胸がチクッて痛い。



授業が終わって、瀬戸くんがこっちを向いて何か話しかけてきそうな気配を無視する。

私は立ち上がって鞄を持って教室を出た。

足早に廊下を歩いていく。


「ねえ、ちょっと。歩成ちゃん?」


え?瀬戸くん?


逃げるように足早に歩き続ける。



「ねえ、ちょっと待てよ」


腕をぐっと掴まれてしまった。



「・・・」


私は瀬戸くんの顔を見なかった。



「こっち向けよ・・・俺、なんかした?怒らせた?」


瀬戸くんの声が切ない。

そんな風にしないで・・・

涙が出るよ。

引き返せなくなるよ。

腕をつかむ手が熱いよ、瀬戸くん・・・





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