青い春の真ん中で
「いや、大丈夫…ですけど、あなたこそ大丈夫?」


起き上がりながら肘を触ると濡れている感触…


「…血⁈」


肘を見ようとしても暗くて見えない。


「あっ。ごめんなさい、どうしよ、私のせいですね、あ、今…私何も持ってなくって…えっと…」


あたふたする女の人を見ながらぼんやり思う。

この状況で、何か持ってた方が驚きですよ。

さっきから私のことばかり。
自分は今、ここから飛び降りる気だったのに。

ひたすら謝ってあたふたするこの人を見ながら、

『ああ…動いて息して喋ってる…この人は今もしかしたら死んでいたかもしれない…』


海底に沈むところを想像すると、体がぞくっとした。


私の擦り傷と引き換えに、この人の今が存在する。


こんな擦り傷ひとつどうってことない、そう思えた。


「大丈夫。擦り傷だから。それより、大丈夫…?とりあえず、ここ離れない?ちょっと…」


怖い…


また飛び込まれたらと思うと…寒気がした。
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