青い春の真ん中で
「ごめんなさい、私のせいで…本当に…」

涙声で、何度も何度も謝るこの人。

どういう思いであそこに立っていたんだろう。

どんな思いを抱えているんだろう。


「私は全然大丈夫なの。だけど…その…」


なんと言えばいいのか。

私は言葉を選ぼうと考えるけど…


「間違ってたらごめんなさい。さっき…」


と、言いかけて彼女を見るとすごく小さくうずくまって、小さな子ウサギみたいに震えている。


私は言葉を飲み込んだ。

そのまま、しばらく沈黙が続いた。


こんな時、もっと話が上手くできる人だったら…


気の利いた言葉も浮かばず、なんとも言えない緊張が漂う。


だけど、このまま帰るなんてできない。

何か伝えなきゃ…


「あ、あの…突然でしかも初めて会った私なんかが言うのもおかしいんだけど」


しどろもどろな私の口調に、自分でも呆れる。


腹をくくり、大きく深呼吸した。


「生きて!命がある限り、生きなきゃ。死んだら何にもなんないから。ここで終わってしまったら、続きがないんだよ?」

私の言葉にずっと伏せ目がちだった彼女は敏感に反応した。


「自分の世界を変えることができるのは、自分なんだよ?自分の世界を、自分の手で終わらせないで…」


言ってる私が泣き出してしまった。

泣きじゃくる私に驚いて顔を上げた彼女と目が合った。


「ありきたりなことしか言えないけど…」


震える声に力を入れる。


「今日を生きて。そして、明日が今日になったら、また今日を生きて。一生って…『今日』の積み重ねだと思うから。一生のうち『今日』がほとんど同じってことはないと思うの。だから…」


思いきって、そっと彼女の手を握った。


「確かに悪い日もある。それが続くこともある。でも、いい日もたまにあったり、普通でありきたりな退屈な日も、あるから。だから、今日を生きることから始めてみよ?」


そう言った私の手も震えてる。


「そう思わなきゃ、私も…やってらんないから。彼氏にフラれちゃってどん底だったんだよね」


無理して笑おうとした私を見て彼女は真っ直ぐ視線を向けてきた。


「学校とかでさ、フラれて泣いてる子見て失恋ぐらいでとか…思ってたの。今までは。でも…今自分がそういう風になってみたら、もう布団から起き上がることもできなくて…」

言葉にしたことで、心が解けてくるのを感じる。


「心、傷つくと…体と心って繋がってるんだなぁって感じるね」


私の言葉に初めて彼女は小さく頷いた。

そして、

「心って痛くなるよね…」

と、か細い声で言った。



「うん…」


また涙が出そうで夜空を見上げた。


「笑える『今日』がまた来るといいよね。その日までとりあえず、生きてみよう…」


私の声が公園に響いた。


「うん…」


涙声の彼女の声は今日聞いた中で一番大きかった。






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