青い春の真ん中で
「あの…これ、良かったら。使って?」


突然の声に驚いて顔を上げると浅中さんと目が合った。


「え…」


浅中さんは私の涙を差し出したハンカチでそっと拭き取った。


その動作にびっくりする私に、ハンカチを手渡すと、

「じゃあ」

そう言って立ち去る浅中さんの後ろ姿を見ながらまたハンカチをそっと顔に当ててみた。


清潔感のあるいい匂いがした。


清潔感のあるまっすぐでサラサラな髪。

色白で大きな瞳は少し垂れ目で、長いまつ毛と小さな口。小柄で華奢な体。


正直、この浅中さんは可愛い。


しかも、こんなにいい子。

どうして沙由奈達が絡んで来るんだろう。


そして、心のどこかに引っかかる。

あの横顔…


ボンヤリとしたシルエットがはっきりと浮かび上がってきた。


あの子…あの時のあの子⁈

あの防波堤で飛び込もうとしてた…あの時の子だった。


「そのうちわかる…」ってこういうこと?


勢いよく席を立つ。

助けなきゃ…


私のこと庇ってくれたんだ。

なんでもっと早く気づかなかったんだろう。


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