青い春の真ん中で
教室に入りそそくさと席に着いた。
沙由奈がいつ来るかと内心ドキドキしながらも、芽衣と目が合うたび大丈夫と頷き合った。

沙由奈は珍しくまだ来ない。

もしかすると今日、門のところで先生が服装チェックをしていたからそれにつかまったのかもしれない。


隣の席の瀬戸くんに借りたタオルを返さなくちゃいけないし、沙由奈のことも聞きたいけれど。

友達が多く、人気者の彼はいつもチャイムが鳴って入ってくる。

友達や女の子に呼び止められて話してる光景をよく見る。


私たちの不安をよそに、沙由奈は教室には来ないまま授業が始まった。

ひとまず安心したところで、次は戻ってきた瀬戸くんにどうやってタオルを返せばいいのか悩んで...

悩みこんでいるうちに授業が終わってしまった。


次の授業は移動教室。


もう...タオルが入ったこの袋を瀬戸くんのところに掛けとけばいいか...


人が少なくなった教室で素早く掛けた時...


「あれ?どうしたの?」


瀬戸くんが立っていた。



「あ、あの。タオル...ありがと」


こんなこっそり返すの失礼だよね、やっぱり。




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