青い春の真ん中で
芽衣が行ったはずの1番近いトイレには誰もいない。


どこ?

どうしよう。

ケータイかけても出ない。


鞄に入れっぱなしなのかな。


トイレというトイレを探して回った。


教室とは違う棟で、理科室や音楽室がある棟へとつながる渡り廊下を走る。


授業中で人通りのないトイレ。



「芽衣?いる?」


「歩成ちゃ...うう...」


芽衣の声。


「芽衣?どこ?」



電気を点けると一番端の掃除用具入れが開かないようにモップで押さえられてる。


モップを外してドアを開けた。


「芽衣!」

そこにいたのは上から水を浴びせられてずぶぬれになっている芽衣だった。


制服はよれよれで胸元のボタンは取れている。


「どうしたの?」


芽衣は泣きながら、

「沙由奈ちゃん達に廊下で出くわして、私思わず逃げたの。走って...沙由奈ちゃん達が追いかけてきて」

体が震えてる。


「渡り廊下で捕まって。そしたら、色目使うなとか男好きとか...罵られて。トイレで水かけられて...」


「ごめん。芽衣、ごめん...一緒についていけばよかったね。ごめんね」


芽衣の手をにぎって怒りで涙が出てきた。


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