青い春の真ん中で
「ありがとう、歩成ちゃん。私のためにあんなに怒ってくれて。私…なんか胸がいっぱいで…」

芽衣が泣きはらした顔で満面の笑みを向ける。


「うん…」


なんだか照れくさい。

でも、嬉しくて満たされた気持ち。


瀬戸くんも…見てたんだ…

もう、これで確実に芽衣の予感は幻となったね。


もう…逃げ出したい。


「かっこいいじゃん、歩成ちゃん。男前!」


グサッ

もう立ち直れない。

悪気のない笑顔で言ってる。


「ほんと、有輝も見る目ねぇな。もったいね…」


「ん?なんか言った?」


周りの声にかき消されて瀬戸くんが何と言ったのかわからなかった。


「男前過ぎて惚れるって言ったんだよ」


またからかう。


「だから女だっつうの」


プイッと顔を背けて屋上へと走った。



「歩成ちゃん、待ってぇ」


ブカブカの体操服で追いかけてくる芽衣に、つい癒される。



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