青い春の真ん中で
脚が弾むように歩いていると、後ろから追い抜くグループの話し声が耳に入ってきた。


「さっきの、沙由奈だった?」

「防波堤に座ってたの?」


「やっぱそうだよね。私も沙由奈っぽいなぁって思った」



沙由奈が?


防波堤?


パッと芽衣を見ると、真紗希の視線も芽衣へと向いていた。


「あ...沙由奈ちゃんのとこ行かなきゃ」


そう言い終わらないうちに芽衣が1番に走り出し、その後ろを私と真紗希が追って走った。


息切れを深呼吸で整えながら、目で紗由奈を探した。

同じ方向で、3人の動きが止まった。


防波堤の上。


うちの学校の制服を着た女の子が1人座ってる。

間違いなく沙由奈だ。


近づくと、沙由奈は顔をこっちに向けて眉をひそめた。


威嚇というよりも少しおびえているようにも見えた。


「な、何よ。まだなんかあるの?」

強がってはいるけれど、声に強さがあまりない。


そういえばこの場所…格闘の末、海に落ちた所だ。


「沙由奈、学校行かないの?」


最初に、真紗希が芽衣の前に立ち沙由奈に聞いた。



小さく笑った紗由奈は、


「行けるわけない…今さらどの面下げていけばいいんだよ。真紗希はうまく逃げれていいね」

視線は海の方へ向けてそう言った。

沙由奈は、少しやせたように感じた。


真紗希は一歩前に出て、

「逃げてんの、沙由奈じゃん」

紗由奈をじっと見た。


紗由奈は微動だにしなかった。


真紗希は、ふうっと息を吸い込んで続ける。

「私達は自分がしてきたことの責任取らなきゃならない。こうなったのも、当然だと思う。歩成が止めてくれなかったら、私達はどこまでも落ちてたと思う…人として最低な戻れなくなる所まで」


真紗希が沙由奈にこんな風に話すのは初めて聞いた。


「芽衣が悪いわけじゃないのわかってるんでしょ、本当は。沙由奈を止められなかった私が悪い…沙由奈が何もかもを芽衣のせいにしたのが悪い…そうでしょ?」


涙声だけど、はきはきと真紗希は沙由奈に問いかける。



紗由奈は小さな声で、弱々しい口調で話し始めた。


「神様は不公平だよね。芽衣は私の持ってないものばかり持ってて。何の努力もしなくてもいいんだから」


沙由奈の言葉に芽衣がビクッとなる。


紗由奈を少しおびえた瞳で芽衣は見つめる。


「私は自分の顔が嫌い。キツイ顏で気が強そうに思われて…」


芽衣は恐る恐る沙由奈に近づいた。

< 84 / 163 >

この作品をシェア

pagetop