初恋
「あの時は賢人が背中を押したくれたからな」
「付き合ったのはお前らの意思だろ」
「そうだな、でも俺自身が気付いてなかった気持ちに気付いてた」
「………………」
「教えてやるよ」
翔馬は俺をじっと見て、ふっと笑った
懐かしい幼い翔馬が見えた
「賢人、お前は好きなやつがいるんだよ」
「好きなやつ?」
好き?
俺が?
「違う!違う!」
「賢人!」
翔馬が俺の腕を掴んで真っ直ぐに見る
翔馬は俺が恋愛出来ないのも知ってる
女なんてヤれれば良いって
「賢人、もう大丈夫だ」
「違う!違う!俺は!」
「高瀬はお前の母親とは違う!
お前も、父親とは違うだろ!」
「翔馬……………離せ………
俺は恋愛なんてしない
必要ない、女なんてヤれれば良い
ちょっと、面倒だっただけだ
今から、やっぱ抱いてくるわ
俺のこの顔に寄ってくる女は腐るほど居るしな」
「翔馬!でも、お前をちゃんと見てくれるやつは居るんだぞ!」
翔馬の声を遮る様に屋上の扉を閉めた
俺をちゃんと見てくれるやつなんて、いないよ