初恋
俺が、荒れはじめた頃
実咲が'泣け!'と俺を抱き締めてくれた事があった
あの頃は実咲と背丈もかわんなくて
「実咲、ずっとありがとう」
「賢人…………良かったね」
実咲はぎゅっと抱き締めてくれた
あのときの様に…………
俺はそっと、実咲を離すと
二人にもう一度向き直った
「もう一つ、伝えたい事があるんだ」
「なんだよ?まだあんの?」
「離婚するんだって
今まで、してなかったのが不思議なんだけど
それで、引っ越す事になる
母さんと、もう一度やり直すために
母さんも仕事あるし、俺も転校したくないから
二人で住めるとこ探して…………」
「そっか!良かったじゃん!引っ越しは手伝うからな!」
「家が遠くなるのは寂しいけど、学校で会えるもんね!
私も引っ越し手伝うからね!」
二人はこうやって、俺の背中を押してくれてたんだ
守ってくれてたんだ
本当は母親の実家に帰る話もあったけど
それは、転校になるから俺が無理で
今、高瀬と離れたくなかった
自分もバイトするからって説き伏せて
母さんも俺の気持ちわかってくれた
今のこの平穏を崩したくなかったんだ