あなたはまだ私を想ってくれていますか?
大きなことがあったわけじゃない。
本当に些細なことだった。
ただのひとめぼれ。
まぁ、一目ぼれなんて信じていなかった俺は何週間も自分で否定し続けていたんだけど。
ただ、大きな木とその近くにベンチがある大学の庭みたいなところ。
ここの大学には他に桜の木のある場所など、華やかできれいなところがたくさんあった。
そのためか、そこには人がほとんど来ない。
そんな場所のベンチに座って本を読んでいた長くて黒い綺麗な髪をしたその人。
風が吹いて邪魔そうに耳に髪をかける仕草。
本を読みながらほほ笑む顔。
太陽の木漏れ日がその人を余計にきれいに見せていた。
俺はその光景に体が動かなくなってただ見とれていた。
それが彼女、椎名を見た最初だった。