コンプレックス
顔あわせにくい相手であるのは間違いない。
茜のあれこれ言った言葉がぐるぐると回る。
「よっ」
「よ、よお」
「明らかに動揺しすぎだっての」
けらけらと笑う俊輔が恨めしく思った。誰のせいでこうなってると思っているのか。
真っ黒の学生服の、首もとは開けられていた。私の学校はブレザーだから目新しくうつる。
というか、どうしてここにいる?
「ここ通るだろうから、はってた」
「はってたって……探偵じゃないんだから」
どきりとしたのを隠しながら「で、返事を聞こうと思って」というのを聞く。
――――返事。
ああ、と自分のローファーの先を見つめながら、足踏みをしたくなる。何故といったらわからない。足踏みじゃなくてもいい。ぐるぐるとまわる頭と、中学時代の俊輔と、大人っぽさが出てきた学生服の今の俊輔がちらつく。