コンプレックス







 嫌いなところばかりが目について、苦しい。だから、俊輔が何故私に告白したのかわからない。


 逃げてしまおうか、と思った私に「馬鹿だなお前」と。

 馬鹿?
 馬鹿ってなんだ!



「知ってるよ、そんなの」
「……は?」



 思わず顔をあげてしまった。
 俊輔は重かったのか鞄を地面に下ろす。



「見ればわかる」
「ちょっと」
「コンプレックスだなんて、誰だってあるだろ」
「それはまあ、そうだけど」
「その人の欠点が気に入らないなら、最初から好きになんてならないって」
「でも」
「あー、わかった。わかった」
「なにが」



 癖なのか、頭を軽くかきむしりながら「俺は」という。



「まな板でも小顔じゃなくても考え方が古くさくても、そんな真希のことが好きなんだ」



    《コンプレックス》



 言い切った俊輔が、とてもかっこよく見えて、それで私はといったら、ものすごく嬉しかったが――――恥ずかしくて堪らなくて、まともに顔が見られないのはどうしたものか。






15/8/4
< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

甘い匂いに立ちつくす

総文字数/1,797

恋愛(学園)4ページ

表紙を見る
つまり君を

総文字数/1,605

恋愛(学園)3ページ

表紙を見る
彼の一言は私を次々と変える

総文字数/6,290

恋愛(学園)7ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop