振り返って、キス
気になる人
入学式から早1ヶ月が過ぎようとしていた頃
「雫、私ね、気になる人ができたの」
少し俯き恥ずかしそうに言う紗稀ちゃん
「へぇ気になる人できたんだ……っえええぇぇ?!」
その言葉を理解していなかった私の驚く声が教室中に響きわたった。
「しーっ!」
慌てて紗稀ちゃんが人差し指を口の前まで持ってきて、黙れと合図する
「えっ、だっだって今まで一度も好きな人とか出来なかった紗稀ちゃんが?!」
「前は前。今は今だよー」
そう、紗稀ちゃんは中学の時も、小学校の時だって、だ。
告られてばかりで誰のことも受け入れない、
高嶺の花のような人だった。