漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
あたしは、自分の抱えた膝に向けて、小さな溜め息をつく。
溜め息が触れた部分が、じんわりと温かい。
「潤……ごめんね」
潤はまたゆっくりと目を開けて、あたしに目を向ける。
「何が?」
「……うん。何か、助けられなかった上に、こんな事になっちゃってさ……」
潤は、あたしから目線を外して空を仰ぐ。
「俺、最初から助けてなんて頼んでないし。将生さんに反抗したのも、俺が勝手にした事でしょ。何で茉弘が謝るのか分からない」
「……うん……」
そうなんだけど……。
潤は、このままでいいの?
このままあたしとは別々の道に進んで、葛原なんかと過ごしていって、三豪会の組員なんかになって……
もしも、あたしが助けたりしなければ、その道を生きていくつもりなんでしょ?
……でも、あたしは例え潤がその道を望んだとしても、素直に送り出すことなんて出来ないよ。
例えあなたが必要ないと言おうと、
唯一の家族として、姉として、
あなたの笑顔を取り戻すまで、戦い続ける義務がある。
だから何をしてでも、どんな手を使ってでも、潤を取り戻してみせると誓った。
それなのに……
あたしは、恭を裏切れなかった。