漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】


「それでもあいつらは茉弘を助けようとしたんだよ。
信じてたものに裏切られ、何を信じていいのか分からなくなっても、それでも助けたいと思った」


「なん……で……だって……あたし……」




「仲間だからだよ」



「……っ!!」



恭の胸から離され、恭の真剣な瞳が、あたしの瞳を真っ直ぐ捉える。


恭の瞳を真っ直ぐ見たのはどれくらいぶりだろう?


そうだ。



あたしは、この真っ直ぐな瞳が大好きなんだ。



頬を温かいものが伝う。


止めどなく。


溶かされた心が、溢れてくるかのように。



それを見た、恭の表情が和らいで、またあたしを胸の中に押し込める。



「ねぇ茉弘?この世の中に、産まれてから死ぬまでに誰一人にも頼らず生きていける人間は、どれだけいるのかな?

俺は、そんな奴一人もいないと思う。

一人で生きていこうとするのは勝手だ。
だけど、人は誰しも一人では生きられない時がある。そんな時に手を差し伸べてくれる人間がいるのなら……」


恭は、血の滲むあたしの手を取ると、その手に優しくキスをする。


「その手を取ったって、いいんじゃないかな?」



あたしが伸ばした手の先にあるのは、優しく微笑む恭の姿だった。
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