漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
大好きな恭の笑顔。
大好きな恭の体温。
その頬にそっと触れると、恭もそれに応える。
「俺は、茉弘が居たから強くなれたんだよ。茉弘が居たから、自分の過去と向き合う覚悟が出来た。ずっとそれまで、誰かが自分の為に傷付くのなら、一人で居たいと思ってた。自分で自分を守れる強い者だけしか受け入れず、自分を守った。」
恭は、あたしの涙を優しく掬う。
「でもあの日、もう茉弘とは居られないと伝えたあの日、茉弘は笑ってくれただろ?自分だって辛いのに、俺に辛い思いをさせないように笑ってくれた。
それと、一緒だよ。
俺も茉弘が辛い時には、茉弘に大丈夫だと言って笑ってやりたい。俺の全てを賭けて、茉弘を心から笑顔にしてやりたい」
何で……この人は……
こんなにも……
「……っ……ふぅっ……」
止まらない涙に、もう嗚咽まで漏れてくるあたし。
きっと顔はグシャグシャで見れたものじゃないだろう。
それでも恭は、あたしから目を晒すことなく、溢れる一つ一つの涙を優しく拭ってくれる。
その恭の優しさが、次々にあたしの心の凍った部分を溶かしていくから、更に涙は止まらない。
「茉弘……俺が前に言った言葉、覚えてる?
"もっと、ワガママ言ったり頼ったりしてくれてもいいのに"って。
俺は、今もそう思ってるよ」
「……っ」
あたしは、思い切り首を振る。
そんなのした事ないもの。
仕方が分からない。
あたしのワガママが恭の負担になったりするのが怖い。
そうなった時の責任の取り方なんて知らないもの。