漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】


百合さんがあたしに口パクで「が・ん・ば・れ」ってやっているけど、心強いような……そうでもないような……。


はぁ~と大きな諦めの溜め息を付いて、あたしはマイクを手に取る。


手が震えてマイクを落とさないように、気を付けながら。


「あ、う、どうも。秋月 茉弘です。」


それだけ言って、あたしは春馬にマイクを返して、すぐに恭の後ろに下がる。


すいません。


これが限界です。


「え。茉弘ちゃんそれだけ?

……あーっと、まぁいっか。じゃあ、後は恭頼んだ。」


そう言って、春馬は恭にマイクを渡す。



その途端、一気に倉庫内の空気が張り詰めるのが分かった。


恭に全ての視線が集まる。


それなのに恭は、そんなのものともせずそこに立っている。



凄い……。



あたしなんて、ここに立ってるだけでも足が震えるのに……。



何を言わずとも、立っているだけでみんなを圧倒する恭は、やっぱり他の人とは違うオーラを纏ってる。



恭は、ゆっくりとそれまでしていた眼鏡を外す。


その目はもう"総長"そのものだ。


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