漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
まさかっ……
まさか、あたしに何も言わず、
葛原の所に……!?
廊下を駆け抜けて急いでリビングへ。
勢い良くそのドアを開けた。
「……っ」
「……あぁ。……分かった。……頼んだ。」
そこには、ダイニングテーブルの椅子に片足だけを乗せ、立て膝で座る恭の姿。
色の薄い細身のデニムに、真っ白なシャツをはだけたまま羽織っているだけの恭の姿は、いつにも増して色気がむんむんと漂っている。
空いている方の手で眼鏡を弄びながら、恭は息を切らして立っているあたしに気が付くと、電話の相手に相槌を打ちながら器用にあたしに微笑んだ。
なんだ……。
良かった。
居るじゃない……。
ホッとしているにも関わらず、未だにバクバクと音を立てている心臓に、「静まれ!」と胸の辺りをぎゅっと握って宥めた。
「……あぁ、うん……。今起きてきた。……あぁ。分かった。何かあったらまた連絡頼む」
電話の相手にそう言うと、通話を切って恭はスマホをテーブルに置いた。