漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】
恭は、葛原達から出来るだけあたしを離れた所に置きたかった。
でも、そうなると恭自身があたしの身まで守ることは出来ない。
「本当は、俺の側に置いておきたいです」
あからさまに肩を落とす恭に、カラカラとした笑い声で、
「無茶言うなや恭!わざわざ敵の目の前に獲物持ってきてどうすんねん!」
と光輝さんの鋭いツッコミが入る。
恭は、少しムッとした顔で、
「…そんなの分かってる…」
と呟いた。
うっわ。
恭、拗ねてる!
なんか…
可愛すぎるっ…!
もうこんなの反則だよ…。
思わず笑みが溢れてくる。
心配で仕方なさそうに見える恭とは対象的に、あたしがこんなにも落ち着いた気持ちでいられるのは、
自分の事なんかそっちのけで、この人を愛しいと思うから…。
「あたしは大丈夫だから。恭もくれぐれも気を付けてね。」
あたしはそう言うと、そっと恭の頬に触れる。
「あのね…」
そして、恭グイッと引き寄せて、耳元でそっと囁いた。
「…好き。」
こんな一言で、どうしてこんなにも想いが溢れてしまいそうになるんだろう?
身体中が熱をもって、涙が出そうになる。
例えば、この感情に名前を付けるとしたら、
これが、“愛”ってやつなのかもしれない。